汚染した空気や水、あるいは有害な光、電磁波などで人は様々な病気にかかります。環境汚染で生じる病気を研究するのが環境医学で、予防医学でも重要な位置付けとなります。
例えば農薬や水銀、ヒ素、カドニウムなどの有害重金属、あるいは環境ホルモンやマイクロプラスチックなどで汚染された食品を摂取すると、病気の発症の可能性が高まります。

特に歯科では、治療行為で金属やプラスチックなど様々な材料を使用し、常に口腔内に存在しているので、身体に与える影響を最大限に考慮する必要があります。

環境汚染物質が人の体に与える影響

下図に環境汚染物質と人の体に与える影響を示します。
一時的に大量に暴露すると急性中毒となります。
しかし、低濃度であっても長期間に亘り暴露し続けると、45歳ごろから慢性疲労症候群や線維筋痛症に代表される神経系や内分泌系、あるいは免疫系に異常をきたす疾患が生じると考えられています。
晩発的には癌の発症です。

歯科材料ではありませんが、低濃度フタレートに長期間暴露しているとインフルエンザに罹患しても、過剰に免疫が抑制状態になり発熱すら起こらない人が現れます。
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アマルガム

歯の充填物であるアマルガムには、重量比で50%の有害重金属である水銀が含まれています。
金属水銀は飲み込んでもほとんど無毒で便中に排泄するとされる一方で、腸内細菌により有機水銀となり消化管から吸収されるなど、人体の水銀汚染の大きな供給源の1つとして挙げられています。水銀は20度で気化するため、熱い汁物でも飲めばアマルガムは常に活発な水銀の供給源となり、特に気化した水銀は有毒です。
日本でまだ環境汚染への対策が十分でなかった頃、工場から排出された有機水銀で水俣病が発生しています。

人への影響は、水銀の毒性だけでなく、水銀への金属アレルギーです。アレルゲンとして全身に悪影響を及ぼす可能性があります。例えば米国の内科医は、アマルガムが高血圧症の原因となるとも述べています。さらに水銀を含めて有害重金属は、女性ホルモン様の作用を示し、他の環境ホルモンとともに乳がんや前立腺癌の原因にもなります。

したがってアマルガムの除去に際しては、一時的にも術者、患者の双方が水銀に曝露しないように、処置には最大限の工夫を要するのです。
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むし歯治療の充填材料の1つがアマルガムである。質量の50%が水銀。残りは銀、錫、銅など。充填した歯に相当する部位の頬粘膜は、しばしば白や赤のマダラ状に変化している。本症例は膀胱がん患者のアマルガム除去依頼。
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手元の吸引バキュームと大型の口腔外バキュームの使用だけでは十分な水銀暴露対策にはならないので、患者は布で覆われている。さらにアマルガム除去に伴う気化水銀を吸い込まないように新鮮な空気での陽圧呼吸管理が必要。除去片は飲み込まないようにするが、万が一に体内に入った場合に備えて高濃度ビタミンC点滴を実施している。

金属アレルギー

歯科用合金は様々な金属元素でできています。ニッケルやパラジウムなど、多くの人がアレルギーを持つ金属元素が含まれる合金も見受けられます。

一般に認識されている金属アレルギーは、ピアス部のただれやアクセサリーが触れた箇所の痒みや赤みです。しかし、口腔粘膜では通常、そのような症状が現れることが無いので見過ごされやすいです。
しかし、口の中の金属は、少しずつ削れたり溶けたりして、食べ物と共に腸管に運ばれ体内に吸収されます。金属イオンは周囲のタンパクに結合してハプテンと呼ばれるアレルギーを引き起こす物質が生まれます。したがって歯科用合金は、口の中よりも、むしろ全身の症状として現れることになります。

皮膚科で重度のアトピーとしてステロイド治療を受けていた成人男性が、口腔内金属を除去した上、点滴にてデトックスを行ったところ、皮膚症状が軽快した自験例があります。慢性疲労や自己免疫疾患として治療を受けていた方の真の原因は、口腔内金属であったとの報告もあるぐらいです。

無闇な処置を避けるためにはアレルギー検査を要しますが、パッチテストは適しません。パッチテストはあくまで皮膚での反応であるので、全身症状を引き起こす口腔内金属には不向きです。万が一金属アレルギーがある人にアレルゲンをパッチテストで貼付すると、さらなる症状の悪化を招きます。また、パッチテストを実施視したことにより、これまでアレルギーがなかった人が金属アレルギーになってしまった、と言う研究があるからです。

チタンには純チタンとチタン合金があり、チタン合金には認知症との関連性が疑われているアルミニウムが含有されています。体内にインプラントされるものには、歯科用も人工関節などの医科用も合金が多いように見受けられます。チタンはアレルギーはありませんが、不耐症が生じる可能性があり、近年は脳炎の発症との関連が指摘されています。アルミニウムは、他にも産業で大きなアルミ鍋を使用して食品に移ったり、アルミで包んだ食品、アルミホイルでの調理、みょうばんの発色剤、制汗剤などでも体内に取り込まれ、取り込みと排泄のバランスが崩れると、体内に蓄積します。アルミニウムは認知症に繋がるとも言われています。しかもアルミはパーティクルが小さいためにデトックスが難しく、他の有害重金属を取り除くキレート剤でのデトックス点滴はなく、特別なクレーを使用します。

このようなことから、当院ではアレルギーフリーの材料を積極的に提供しています。
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フッ素(フッ化物)

フッ素への曝露が乳幼児の脳の発達に影響を及ぼすかもしれない。
歯の成長過程にある乳幼児が高濃度のフッ素に曝露すると、斑状歯と呼ばれるエナメル質形成不全が発生することは古くより知られていました。一方、フッ素で歯が強化され、むし歯に罹りづらいことも知られていました。そこで米国ではむし歯の洪水時代に、むし歯予防の折衷案として、わずかな班状歯の発生を容認しながらむし歯の発症を最大限に抑えるフッ素濃度で、水道水にフッ素を添加したのです。しかし水道水は飲み込むため、全身に影響が及びます。

一方、本邦では、水道水のフッ素事業を計画した時は、ちょうど四日市ぜんそくなど郊外問題が社会問題化していた時期であったため、一部の地域で社会実験が行われたものの、婦人などの強い反対運動で水道水のフッ素化は実現しませんでした。

当初は、ごく低濃度では人に大きな影響はないだろうと思われていたフッ素ですが、飲料水による全身的な曝露では甲状腺機能低下が観察されたり、特に乳幼児での問題が次第に明らかになりました。

とりわけフッ素の曝露が乳幼児の脳の発達に悪影響を与え、フッ素に暴露する濃度が高くなるに従い、逆比例的に知能指数が低下することが明らかになりつつあります。
2025年1月に米国医師会雑誌(JAMA)に掲載された論文では、渉猟した74本の論文のうち64本でフッ素濃度とIQの逆相関があったと記述しています。

本邦では、局所応用のフッ化物濃度は、歯科診療所では9,000ppm、フッ素入り歯磨き剤では1,500ppmです。小児用ではさらに低濃度の歯磨き剤も販売されています。
スェーデンのアクセルソン博士のフッ素濃度を違えた歯牙の再石灰化に関する研究では、低濃度のフッ素を使った方が脱灰した底からしっかりと再石灰化が起こることが判明しています。一方、高濃度のフッ素では表面だけが固まり、中は十分に再石灰化しないようです。

私立幼稚園の園歯科医として、かつてむし歯が多発していた頃にいち早くフッ化物洗口を指導しましたが、最近ではむし歯を持つ子の割合も低下し、また上述の理由から園でのフッ素うがいを止めてしまいました。それから数年経ちますが、むし歯の増加傾向は見られず、相変わらず特定の幼児に集中して発症しています。全体にむし歯の発症が減少した理由は、口腔衛生の普及と家庭でのフッ素配合歯磨き剤の利用頻度の向上によると考えます。

フッ素による疾患例(文献より);認知機能障害、てんかん、ハッチントン病、統合失調症、ADHD、うつ、気分障害、アルツハイマー病、パーキンソン病、歯牙フッ素症、甲状腺機能障害、喘息、COPD、高血圧症、筋機能障害、低エストロゲン、不妊、糖尿病、ネフローゼ、慢性腎不全、腎臓がん、大腸がん、膀胱癌、前立腺がん、骨フッ素症など
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乳幼児に過剰なフッ素を応用することは回避する。
かつて実施していた幼稚園でのフッ化物洗口の風景。たとえ低濃度のフッ素利用であっても、まず1ヶ月間、真水で洗口トレーニングさせてから始める。決して飲み込まぬよう下を向き、ぶくぶくうがい後に全量をしっかりと吐き出すように監視する。
各家庭でフッ化物配合歯磨き剤が普及した今日、集団応用の意義を協議の上見直し中止した。

マイクロプラスチック

今日の歯科医療は、大量のプラスチックを使用しています。使い捨てのエプロンやトレーなどにさえプラスチックが含まれいています。特にコロナ流行後は、医療全体での使い捨て製品が増加して、医療廃棄物のプラスチックによる環境汚染が危惧されています。環境中のプラスチックは段々と壊れてミリサイズやナノサイズの小さなプラスチック片になっていきます。5mm以下のサイズがマイクロプラスチックと呼ばれるもので、海洋汚染の原因となります。プランクトンや魚の体内に認められ、食物連鎖でやがて人体にも取り込まれます。人の脳でもマイクロプラスチックが見つかるようです。マイクロプラスチックは有毒のPCBなどとも結合します。

ところで、歯科治療でプラスチックを使用する頻度の高いものは、むし歯の充填材、CAD/CAM冠、義歯、矯正などです。
アマルガムに代わる充填材は、プラスチックとフィラーと呼ばれる粉末状石を混ぜ合わせた複合材のコンポジットレジンが使用されています。むし歯1箇所に約0.3gを使用します。流動性が高いものやパテ状のものを充填した後に、青色の光を照射して固めます。練り合わせて化学反応を利用して固める製品もあります。

プラスチックは、モノマーが重合してポリマーになることで固まるのですが、全てがポリマーにならず一部はモノマーのまま残留します。口腔内で固められたコンポジットレジンの重合率は、工業製品であるCAD/CAM製品に比べ劣ります。いずれにせよ、ナノサイズのプラスチックが唾液中に溶出しています。プラスチックには溶解剤も含まれるので、ビスフェノールAも溶け出します。これは環境ホルモンで、女性ホルモン用の作用があります。

今のところ、充填材や義歯から出たマイクロプラスチックがその人にどれだけ吸収されるのかは、よく分かっていませんが、いずれにせよその人の死後を含めて環境中に放出されることは確かです。

現在の歯科医療でプラスチックを避けることは困難ですが、治療を必要としない健康づくりに取り組んだり、なるべく重合率を高める工夫や、治療中に飲み込ませない工夫、あるいは耐摩耗性が高く削れにくい製品を使用して詰め替える頻度を減らす、費用が許せばCAD/CAM冠よりジルコニア冠を使用するなど、なるべくマイクロプラスチックを作り出さない治療を心がけています。
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キシリトール

キシリトールは糖アルコールの1種です。糖アルコールは砂糖より安価で甘味が強いため、産業で好まれる原材料です。
キシリトールは、むし歯菌の増殖を抑えむし歯の発症を予防するとして、ガムなどの製菓産業で利用されています。あるいは歯磨き剤に含まれる製品も見受けられます。

糖アルコールの摂取で腸の透過性が亢進し、リーキーガット(腸漏れ)が生じます。腸管粘膜の細胞をタイルに例えるなら、タイルの目地が緩み、その目地から、本来、取り込まれないような未消化の大きな分子量の食べ物が腸から漏れ出るのです。腸管の周囲には、異物が侵入しないように、身体中のどの部分よりも多くの免疫細胞が見張っています。この免疫細胞が巨大な未消化の分子を異物と認識して、湿疹など身体に様々な症状を催すのです。
このリーキーガットは、ゾヌリンという物質を検査で証明することで可能ですが、日本国内では検査ができないので海外の検査機関に発送しています。陽性の場合は、タイルの目地が再び回復するよう、追加の検査を含め治療を提供しています。

つまり、むし歯予防でとんでもない病気を引き起こすこともあるので注意が必要です。
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トリクロサン・クロルヘキシジン

トリクロサンは抗菌物質で、歯磨き剤や洗口剤にに含まれる製品が見受けられます。このトリクロサン製品を使用した経産婦の母乳中からトリクロサンが検出され他との報告があります。殺菌剤は確かに病原菌を殺菌しますが、同時に常在菌も殺菌してしまいます。また、飲み込むことで腸内細菌叢に対しても強い影響を及ぼします。大腸がんへの関与も指摘されています。

クロルヘキシジンも歯周病菌の殺菌効果で好んで用いられます。様々な研究から至適濃度は0.12-0.2%です。これ以上濃度を上げても副作用が起こりやすくなります。下限を下回れば効きません。ところが、国内ではクロルヘキシジンへのアレルギーが起こりやすいという日本人の体質から、この至適濃度での口腔リンス剤の製造は認可されないようです。
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491-0859 愛知県一宮市本町1丁目4-19
電話 0586 (72) 2351 電話は午前中にお願いします。

院長 歯科医師 瀧 昌弘
副院長 医師  瀧 友紀

最寄駅 JR 尾張一宮駅 または 名鉄一宮駅 より徒歩5分
一宮警察署 西隣

休診日 木日祝祭日

歯科・歯科口腔外科・小児歯科、内科

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